
ショットのダブルライダース 613UST、通称"ワンスター"が欲しくてヤフオクやメルカリで古着をずっと探していたのですが、状態がいい物を見つけてもすぐに売れてしまい、新品を購入しようかと悩んでいました。
ある日、家の近くの古着屋が新しくオープンしていたので、何となく立ち寄ってみたら偶然にもジャストサイズの613USTを見つけてしまいました。
全体の状態を見ると若干レザーの乾きがあり、エポレット(肩部分)のスターやボタン部分のくすみや微量のサビがあるので気になりましたが、カビも無く、腕部分のシワも深く入っていないし、全てのファスナーも全て滑らかに稼働する良い状態で、定価の約3分の1程度の値段であったので即買いしました。
これは恐らく、着用4〜5回程度で、クローゼットに1年〜2年ぐらい保管していた状態だと予測します。
このままでも十分に着れますが、レザーが乾いている箇所は問題なのでオイルメンテナンスの必要があります。
ちなみに古着の革ジャンでカビが発生してると、レザー内部で繁殖しているのでクリーニングでも対処できないので注意してください。
今回、古着で購入したショット 613UST ワンスターにオイル入れや金属部分磨きなど、全体的なメンテナンスをしましたので参考になればと思います。
購入した613UST ワンスター
僕が購入したワンスター613USTの実物です。

背中のレザーの状態も綺麗です。

次にエポレット部分を見ていきます。
ボタンは若干のサビとくすみが出ており、スター部分にもくすみが出ています。

襟部分のボタンも同様のサビが発生しており、プツプツとしたザラつきがあります。

アーム部分はレザーの乾きによるザラつきが見られます。

背中の首元にある現行タグです。

たまに613USTでは縦についたタグ表記が"TALL"ではなく、"LONG"という表記(物によっては現行ラベル下部分に付いたタグ)もありますが、これらは同じ商品になります。
これについて直接、上野商会さんに聞いてみたら発売当初は"LONG"表記で、現行は"TALL"となっているそうです。
内側のタグも非常に綺麗な状態です。品番は7164


左ポケット内にあるタグですが、記載してある38という数字はサイズで、019とは製造年2019年という事でしょうか。
追記:上野商会さんの回答では38の数値はサイズ表記で合っていますが、019の数値は管理番号であり、年式では無いとの事です。
ちなみに613USTの"US"は正規輸入販売代理店の上野商会(UENO-SHOKAI)取り扱いを表し、後に続く"T"は613USのトールレングスモデルという事です。
必要な物
今回使用する物です。
・馬毛ブラシ2個(埃取り用と仕上げ用)
→1,760円×2=3,520円
・タオル3枚(汚れ取りと乾拭き)
→家にある物を使用
・マスタング ペースト(レザーに栄養補給をして柔らかくする)
→3,386円
・ラナパー レザートリートメント(艶出し)
→3,300円
・ろうそく(スムーズにファスナー稼働させる)
→100円
・ピカール(ボタン部分磨き用)
→474円
・金属磨きクロス(スター部分磨き用)
→100円
です。
合計で約10,880円となります。
メンテナンスに結構な金額が掛かると思いましたが、ワンスターを安く購入できた分、綺麗に復活させていくにはこれぐらいの出費は必要なものだと割り切りました笑
オイルに関しては仕上げに光沢を出したかったのでラナパーを追加していますが、必要ない方はマスタングペーストのみで良いと思います。
メンテナンス工程
そして、今回のメンテナンス工程です。
・馬毛ブラシで埃取り
・お湯で濡らしたタオルで表面の汚れを拭いていく
・マスタングペーストで栄養補給
・1日置いてタオルで乾拭き
・さらに1〜2日置く
・ラナパーで艶出しする
・1日置いて乾拭きする
・ろうそくでファスナー稼働をよくする
・ピカールでボタン部分を磨く
・金属磨きクロスでスター部分を磨く
・仕上げのブラッシング
になります。
ブラッシング
1番目のメンテナンス工程ですが、全体的に馬毛のブラシでブラッシングをして、革の表面についた埃や汚れを落としていきます。
ブラッシングには馬毛を使用してください。
馬毛ブラシを選ぶ理由は毛が細くて柔らかいので、ホコリ取りと仕上げに優れているからです。
豚毛ブラシはレザーのつなぎ目などの深い部分に毛が届きにくいのです。
革靴にクリームを塗る時に適したブラシだと思います。
ちなみに馬毛ブラシより山羊ブラシの方が柔らかいので、より繊細にメンテナンスできますが、価格が高くなります。
今回使ったブラシはコロニル 馬毛ブラシです。


馬毛の長さは約2.8cmあるので十分な長さと毛量です。

全体に細かくブラッシングしていきます。

襟の後ろには埃が溜まりやすいので念入りにブラッシングします。


肩のエポレットを外してブラッシングします。


肩から脇下まであるプリーツ部分も大事なブラッシングポイントです。


ブラッシングした後はお湯で濡らしたタオルで全体を拭き上げて汚れを落としていきます。

ブラッシングの重要性
レザーメンテナンスの7割はブラッシングで決まると言われてます。
ブーツメーカーで有名なレッドウイングの店員の方もブラッシングが最も重要と言っていました。
表面の不純物を取り除く事でオイルを塗った時の浸透が良くなります。
普段着ている場合でも付着した埃や汚れを放置すると、それら不純物がレザーの油分を吸ってしまうので劣化の原因となるそうです。
レザー製品は革ジャンに限らず、靴やウォレットその他においてもブラッシングはとても大事なメンテナンスとなりますので毎回のケアを忘れずにしてください。
僕は着た後に毎回必ずブラッシングをしてます。
オイルメンテナンス
最初に使うオイルはマスタングペーストを塗って革内部のケアをしていきます。


マスタングペーストの蓋を開けると寒い季節にも関わらず(1月に撮影)プツプツと表面が液化しています。

こちらマニュアルです。

マスタングペーストとラナパーの違い
これは僕の見解ですが、メンテナンスされていない古着の革ジャンに初めてオイルを塗る場合、マスタングペースト(馬油)が1番優れていると思います。
他にもラナパー レザートリートメントという、マスタングペースト同様に優れたオイルがありますが、僕は古着の革ジャンへの最初のオイル入れには使わないです。
理由は植物性の油だからです。
ショットの613USTはステアハイド(牛革)であるので乾いた牛革には同じ動物性の油(馬油)の方が相性が良く、最初のメンテナンスに適していると判断しました。
メンテナンスされずに時間が経った古着の革ジャンは油分が飛んでしまい、革が乾いている状態なので硬くて表面がザラついています。
これに対してマスタングペーストは革への浸透力が早く、内部から栄養を与えるスピードが違うので革が柔らかくなりやすく、ザラつきの改善に適したオイルだと思います。
■マスタングペーストの特徴
・動物性の油でほぼ馬油100%で浸透力が高い
・革への栄養補給に優れ、革内部からケアする
・革が柔らかくなる
・光沢感はそこまで無い
■ラナパーレザートリートメントの特徴
・成分は蜜蝋(ミツバチの巣を構成する蝋を精製したもの)とホホバオイル(ホホバという植物の種から抽出される天然由来の油)
・光沢、艶を出すのに優れている
・撥水性がある
勿論、ラナパーでも栄養補給されますが特に仕上げに光沢感(艶)を出す目的に適したオイルだと思います。
マスタングペーストで仕上げると光沢感はそこまで出ません。
しかし、メンテナンス工程において光沢を出す事よりも、まずはしっかりと革に栄養と油分を与え、しなやかにしていく作業が最初に必要だと僕は思います。
普段から着込んでの通常メンテナンスとしてラナパー レザートリートメントか、マスタングペーストのどっちが良いかですが、
これはご自身のレザーをどのように仕上げたいのか好みに分かれると思います。
レザーをしなやかにし、早く体にフィットさせたい、エイジングを早く進めていきたい方はマスタングペーストを使用し、
光沢艶があるレザーに仕上げたい方はラナパー、という仕上げの違いかなと思います。
また、ラナパーの方が撥水性が高いです。
そして革ジャンを保管した状態から着出す前のメンテナンスにはまず、マスタングオイルを塗る事をお勧めします。
マスタングペーストで内部ケア
では、マスタングペーストを指に付けて塗っていきます。
オイルを塗る時にブラシを使うやり方もありますが、今回はレザーのザラついた乾きのある部分を手の感触で確かめながら塗っていくので指や手を使っていきます。

指につけるとすぐに溶けて液状になりますが、塗った時の伸びはそこまで良くありません。
付けすぎない様に少しずつ付けながら馴染ませる様に塗っていきます。
実際に塗ってみるとわかりますが、マスタングペーストの浸透力はかなり早く、どんどん吸収していく感じです。

ここで注意しないといけないのが、塗り過ぎはカビの原因になるので薄く塗る事を意識します。
塗っているうちにどれくらいの量を塗っていけば良いかわかってくると思います。

着ている間に擦れやすい袖部分にも塗っていきます。
ブラッシングした襟の後ろやプリーツ部分含めて全体に塗っていきます。
特に稼働部分である腕や肩付近、お腹部分や乾いてザラついた部分にはオイルの量を少しだけ多めに意識して塗っていきました。
何回も言いますが、塗り過ぎると後でカビの原因になるので注意が必要です。
ちなみにマスタングペーストは塗った直後は光沢感はありますが、乾くと光沢感は無くなり、自然な仕上がりになります。
塗り終わったらそのまま1日置いて、乾いたタオルで拭いていきます。
1日置く理由はオイルを革に浸透させる為です。

乾拭きした後の613USTです。
画像で見るとオイル前との見た目はさほど変わりませんが、現物は乾いていた箇所が潤った様に見えます。

この時点で着てみると革が柔らかくなっていましたのでマスタングペーストの効果はかなり効いていると感じられました。

下図はオイル前とオイル後の比較画像です。


マスタングペーストは光沢感が出るオイルではないので画像で見ると何か劇的には変わった感じはしないと思いますが、塗る前と後ではしなやかさは全く違います。
アーム部分ですが、これはオイル前と後で違いがわかる画像が撮れました。

オイル前はザラつき感がありレザーが粗く見えますが、オイル後だと滑らかになっているのが分かるかと思います。
さらに2日間、風通しが良い場所に掛けておきます。
ラナパーで艶出し
次はレザーに光沢感、艶を出すのにラナパー レザートリートメントを塗っていきます。

箱の中にはラナパーとスポンジ2つ、マニュアル類が入っています。

ラナパーの中身です。

マスタングペーストは表面がプツプツと液化していますが、ラナパーの表面は完全に固まっている状態です。(両方とも同じ1月に撮影)

ラナパーも指で塗っていきますが、マスタングペーストと比較すると溶けるスピードは遅くて硬めです。
指でグリグリっと押しながら指で回していくと溶け出します。

オイルの感触は少しドロッとして粘着感があります。

全体に塗っていく要領はマスタングペーストと同じなので解説は割愛させていただきます。
下図はラナパーを塗る前と塗った後の比較です。

中央のファスナーから右側がラナパーを塗った部分です。
左側と比較すると右側の光沢感(艶)の違いがわかると思います。

下図は同じくアーム部分での比較です。

マスタングペーストと比較すると(画像の左側ラナパー前)かなり光沢感、艶が出ているのがわかると思います。
全体にラナパーを塗ったら、1日置いて乾いたタオルで拭き上げて艶を出していきます。
※ちなみにラナパーは拭き上げしなくても大丈夫ですが、マスタングペースト含めて短期間で塗ったので今回は乾拭きしました。
拭き上げ無しの状態だと光沢感は強く、撥水に効果的になるのが特徴です。
ファスナーメンテナンス
ファスナーの稼働については問題なかったのですがついでにやっておきます。
メンテナンスには普通のろうそくを使って稼働を滑らかにします。
こちらは100均(ダイソー)で購入した物ですが、ろうそくであれば何でも良いのでコンビニでも売っていると思います。

ファスナーに擦っていくので、なるべく細いろうそくが良いです。

ファスナーを閉めた状態で擦っていきます。

袖部分のファスナーにも擦っていきます。
後は何回かファスナーを開け閉めすれば完了です。
更に稼働が良くなった気がします笑
ボタンとスター部分の金属磨き
次のメンテナンスではボタン部分とスターの金属部分を磨いていきます。
Schott USA製品の金属パーツはレザーの染料やコーティング、鞣し(なめし)剤などで化学反応を起こし、変色していくそうです。
磨くものとしてはピカールが良いと上野商会さんからアドバイスもらいました。
ちなみに材質はボタンもスター部分も磁石が付くので元の素材は鉄だと思われます。

ボタン部分にはアドバイス通り、ピカール液を使って磨いていきます。

試しにジャケットの左側にあるポケットのボタンを磨いていきます。
下図は磨く前のボタン部分です。

綿棒を使って下図の様にピカールを付着させます。
ピカール液の量が少なすぎると中々くすみが取れないので調整しながら磨いてください。

円を描く様にグリグリっと磨いていきます。
磨いている時に錆のプツプツ部分がザラザラっとします。
レザー部分に付着しない様に気をつけながら磨いていきます。

磨いたボタン部分です。
磨きすぎたせいか鏡面になってしまいました。

磨く前と後の比較です。
明らかに違うのがわかると思います。

同じ要領で全てのボタン部分を磨いていきます。
ボタン部分をピカールで磨きすぎるとメッキが剥げる可能性があるので"磨きすぎ"には注意してください。
僕の場合、結局はピカールの液がボタン周辺のレザー部分に付着して白くなったので、濡れたタオルで拭いてから再度ラナパーを塗っていきます。

スター磨きは100均(ダイソー)の金属磨きクロスを使います。
理由はスターの形状が複雑なのでピカールを使うとレザー部分にピカールの液が付着するのが嫌なので金属磨きクロスを選択しました。

クロスは結構小さいです笑

下図はスターを磨いた比較です。
完全にくすみが消えてスターが光ってます。

スター部分の磨きにはピカールでも有効ですが、ボタン部分のメッキ材質が違うので磨きすぎるとメッキが剥げると思いますので注意してください。
ちなみにこの金属磨きクロスはボタン部分にも使用してみましたが、全く効果がありません。
ボタン部分にはピカールを使用するのが使いやすいです。
あと、ベルトのバックルに関してはメンテナンスする必要が無い状態だったのでタオル等で乾拭きのみにします。
もし、バックルを磨く場合、シルバー磨きなど使うと地金が出やすい為、繊維の細かい布地で磨くのが良いと上野商会さんからアドバイスもらいました。

仕上げブラッシング
仕上げに再度全体をブラッシングして艶出ししていきます。
ブラッシングで更に艶が出た気がします。
ここで注意があります。埃落としで使った馬毛ブラシはなく、新しい馬毛ブラシを使ってください。
埃取り用のブラシだと、毛に溜まった埃が付着してしまうので上記で解説した通り、埃が革の油分を吸って劣化しやすくなりますので気をつけてください。
メンテナンス完了
これでメンテナンスは完了です。
比較画像を見てもわかると思いますが、ラナパーを使った事でレザーの光沢感、艶が違います。
これでショット613USTワンスターの復活です。


メンテナンス前ではレザーの油分が飛んで硬くザラつきがあり、くすんで見えますがメンテナンス後にはマスタングペーストでレザーのしなやかさが戻り、ラナパーで光沢艶が出て良い状態になりました。
メンテナンス後に数日間、何回か着てみましたがレザーのしなやかさが戻って納得の状態になりました。
まとめ
いかかでしたでしょうか。
ショットのダブルライダース 613UST ワンスターを古着で購入してからのメンテナンスやり方をまとめました。
僕にとって初めての革ジャンのメンテナンスでしたが、必要な物さえあれば簡単に納得のいく仕上がりになったと思います。
実は今回、613USTの古着をメンテナンスしながら思った事ですが、ショットのライダースは古着ではなく、新品を購入した方が良いと思いました(当たり前ですが)
理由はメンテナンスしている間に愛着が湧いてきました。
こんなにも愛着が湧いてくる物ならば新品で購入し、最初から自分でメンテナンスしていく方が気分的にも楽しいし、着ていく価値があると感じました。
こんな良い物を作ってくれたScott N.Y.C.や上野商会さんに感謝します。
また、上野商会さんにはメンテナンスやタグ表記について細かく何回も教えて頂きありがとうございました。
あと、最後にですが毎回着た後のブラシングは忘れずに必ず行って下さい。
レザーの質感が元に戻る感じになるのと、小さな汚れなどが綺麗に落ちます。
一生大事に付き合っていく上で劣化を防ぐ為にも1番重要な作業になります。
最後までありがとうございました。
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